ライブの最中にお客さんがザワつき始めたら・・・どうしたらいいだろう?

ステージの見せ方を考えてやまない
長老と若者の往復書簡録10

syokann

往路 長老 いしはらとしひろ から 前途有望な若者 山本優作へ

のう、ヤマモトよ。
長く生きておると、いろいろと悲しいことにも遭遇するが、自分の努力の成果である、晴れ舞台の姿を無視され、それだけでなく妨害まで受ける、というのは、その中でもかなり上位に入るものじゃろうなぁ。

たとえばじゃ。
結婚式において 主役たる二人が 神主さんの祝詞を あるいは牧師さんの祝福を受けているときに、参列している人が大声でしゃべっておったら、普通は注意を受けるか、つまみ出されるわな。

ところが、恐ろしいことにライブ会場においては、そういうことが時々まかり通るのじゃな。
それがストリートライブだったら、むしろ当たり前かもしれない。
誰に頼まれたわけでもなく、勝手に町の一部を占拠して歌っている人間の歌を聴く義務はない。
それでも足を止める人が出てくるのは、そのパフォーマーになんらかの魅力があったからだ。
でも大多数の人は、自分のペースで街を歩き、しゃべりたい人はしゃべる。
それで当然である、ストリートライブの場合は。

じゃが。
わざわざお金を払って見に行ったライブバーやライブハウスでそういうことが起こるのは、どういうことじゃろ?
お客様の抗議行動の一種なのだろうか?
それとも単にマナー、節度、人のやっていることに対するリスペクトが欠けているだけなのだろうか。

自分自身に置き換える。
人のライブステージを見ていて、もうどうしようもないくらいにつまらなかったら。
会場を出るか、あるいは後ろのほうの他のお客様の邪魔にならないところに下がって、
目立たないようにしつつぼんやり考え事にふけったりする。もしロビーなどがあるような場所なら、そこに出て飲み物でも飲んでおるだろう。

映像の中では、わしは「演奏が詰まらなかったら お客様にはしゃべる権利だってある。」と言ってしまったが、
今考えると、それもちょいと違うかもな、と思うておる。
たとえ、ワシにとって、あなたにとって どんなにつまらない演奏を繰り広げていようと、その人を目当てに見に来た人もいるはず。
そのお客様の邪魔をしてはいかん。
わしが、あなたが ステージ上の彼や彼女の演奏を気に入らないのは仕方がない。
単に好みの問題かもしれないし、ステージの彼や彼女が、自分のやっていることのレベルがあまりに低すぎることに
自覚症状すらなく、どうしようもないステージを繰り広げていることにうんざりしてのことかもしれぬ。
それはあくまでも、リスナー=お客様個人の問題である。

だが、だからといって、しゃべっていい、ということにもつながらない気がしてきた。
ステージ上の演奏に対して気に入らない、という意思を表示するには 退場、あるいは後方に下がる、で十分なのではないかと思うのだ。
あるいは お義理の拍手をしないとか。

好き嫌いはともかく、ステージ上の人が明らかに誠実に、ある程度以上のグレードのものを見せてくれている時ならば、やはりしゃべりだすお客様のほうも失礼じゃよ。
自分が礼節というものをかけらも持ち合わせていません、と その場にいる皆様に公言するようなものなので自業自得ともいえるが。

まぁ、日本のロック・フォーク黎明期のことを考えれば、ずいぶんましになったのかもしれない。
何せこのころは、ちょっと気に入らないと、「帰れコール」だ。
ワシは「帰れコール」のことを知った時、あれはゲームの一種で、ミュージシャンとお客さんの「ちょっとゆがんだコミュニケーション」だと思っていた。
だけど、その時代から活躍している先輩方の話を、読んだり聞いたりすると、やられたミュージシャン側のダメージも相当大きく、当たり前のことながら相当傷ついていたらしい。
帰れコールをする側と、そのミュージシャンのファンとの間の派手な喧嘩、なんてのも普通だったようだし。
団塊の世代の皆様はやりますなぁ。

とまぁ、映像ではステージのミュージシャンの気持ちでトークをしたが、こちらでは、ちょっと角度を変えてみた。

「演奏中のざわざわ」が起こってしまうのは、基本的にはミュージシャンの責任だと思う。
みんなを引き付けることができなかった。パフォーマーとしての実力不足。

でも、お客様のほうにも最低限の節度は必要なのだ。

「金払ってんだから、なにしたっていいだろ。」「おれは客だ。」
それはそうかもしれないけれど、金を払ったから、客だからと言って、何もかも、すべてが許されるわけでもない。
なによりも。
上のようなセリフを吐いた瞬間に、または行動としてあらわした瞬間に、その人の「品位」というものが、一挙に10段階くらい下落することを知るべきじゃな。

ヤマモトよ。
また、お前様が返しにくいような独白的な文章を書いてしもうた。
ボケ老人と思って許してくりゃれ。
むふふふふ。

復路 前途サンシャインに溢れる若者 山本優作 から いしはらとしひろ へ

帰れコールは辛いですねぇ。
駆け出しの頃にそんなもん食らってたらヘシ折れてた自信があります。
生まれたのが今の時代でよかった。

ところで、一度ザワつき始めた人たちの視線を集め直すのって、どえらい重労働じゃないですか。
今回はこんなテーマですけど、基本的にはショウの冒頭でしっかりお客さんを掴んで、惹きつけ続けることが大前提で。
だからもし毎日お客さんがザワザワしちゃうようなら、ライブの曲順や構成を見直さなきゃですね。

となると、どうしたら人を掴めるのか、引き付け続けられるのかって話しで。

そういうのって、自分が惹きつけられてる時に

「今惹きつけられてるぞ!」

って気付いて、

「どうして惹きつけられたんだろう?」

っていうことを問い掛けないと、答えって出ないんですよね。
受け取り手の立場でいる時にしか、受け取られ方の勉強が出来ない。

だから漫画でも映画でも漫才でも何でもいいから、自分の好きな娯楽にどうして自分が夢中になってるのかを全力で調べること、必要だと思います。
もちろん、お客さんを掴んで惹きつけて楽しませたいと強く願うならば、ですけども。

具体例もノウハウもあるけども、それを自分の中に落とし込んで力にするためには、やっぱりそういう覚悟を決めて行動に起こすっていうのが最低限必要だなぁ。
おお、自戒自戒。

芸の道は果てしないであります。

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