ミュージシャンがお客さんに甘えるってどういうことなんだか、という長老と若者の語らい。

ステージの見せ方を考えてやまない
長老と若者の往復書簡 その7

syokann

往路 長老 いしはらとしひろ から 前途有望な若者 山本優作へ

甘え。
おおお。なんという甘美な響き。
甘美、という言葉にも すでに「甘」という字が含まれているしのう。

甘え。
よいではないかぁ。
ワシだって フジワラノリカの膝だったら思いっきり甘えてみたいぞ。
いったいどこが悪いのじゃ?え、ヤマモト。

そりゃあ、お前様がそもそもおなごに甘えるなどということができない、という立場なのには 同情を禁じ得ない。
彼女殿はいるらしいが 甘えさせてもらうなどということは 夢のまた夢なんじゃろ?え?
あー、残念残念。

ふふふ。ヒヒ爺道まっしぐらなワシ。
人が彼女につれなくされる様を見て 笑いが自然とこぼれて生き生きとしてしまうワシ。
年を取る、というのはよいものじゃ。ふはははは。

まぁ、人間だから完全に甘えをなくすのは難しい。
では、甘えが許されるのはどういう状況なのだろうか?
文句なく甘えたことが許されるのは、子供じゃ。
子供だから、ということで許されてしまうことは いくつかはある。
もちろん許されないことだってあるが、「まぁまぁ子供のやることだから、言うことだから」
ということで許されること。
それを許すのは誰か。
親であり、周りの大人である。
状況によっては大いに許されたり、周りの大人を和ませたりする。

でも、残念ながらステージに立っている人も見ている人も、ほとんどが大人である。
それは比喩的な意味でも、言葉そのものの意味でも。
つまり子供なら許されるけど、大人では許されない種類の甘え。
そしてそして、ものすごく残念なことに ステージ上から発せられる 大人の甘え、なんてもんは
見ているほうは 気持ち悪いか 腹立たしいだけである。

子供がいいそうな甘え、をステージ上の自分の言動に当てはめてみる。
自分でケツを拭くべきことを 人のせいにしたり転嫁したりすること。
言い訳すること。

日常の仕事の上ならば、したくはないだろうけれど、しかるべき言い訳が必要な場合だってあるかもしれない。
しかしステージ上から芸人の言訳なんぞ、絶対聞きたくない。

あ、一つだけ甘えてもいい人はいるかもしれない。
「甘えを芸の域まで高めている人」
でもそれを芸にする過程は 全然甘くなさそうだなぁ。

そういえば、前の往復書簡では、かなりゲイジツの奥深いところにも届かんばかりの勢いで
難しげなことを書いておったではないか。
お前様もなにかをこじらせたのかの。まだ、若いのに…。

ヤマモトよ、お前様はステージの上から甘えてしまったことってあるのかのう。

復路 前途有望な若者 山本優作 から 長老 いしはらとしひろ へ

ゲイジツの鬼、山本です。
すいません嘘です最近練習サボってます。

彼女様から迫害を受けているから女の子に甘えられない、といった発想は、実にレベルが低いですね。
僕くらいになると、知らないお姉さんが半径1メートル圏内に来てくれただけで心が救われるようになります。
お釈迦様も仰っていますね。

「足ると知りなさい」

と。
そういった方面から考えて現在の僕は、足るを知った聖人であると考えられます。
聖人最近練習サボってます。

何でしたっけ
あ、そうだ、「甘え」ですね。

ありますよステージから甘えたこと。
ありますどころか、甘えてる状態がデフォルトだった時期がすごく長かったんです。

それはどっちかっていうと気持ちの持ち方というか。
だから、結局行動にも出てたとは思うんですけど。
例えば、僕はずっと誰かが自分に歩み寄って深く理解と同情をくれるのを待ってたんですよね。
誰が金を払ってんなことするものかと。
正気の沙汰じゃないんですけど、本気でそう思ってました。
だから、色々と変なこと沢山してたと思います。

でも結局、お客さんに甘えると後悔するんですよね。
お客さんは取りあえず置いといたとしても、少なくとも自分はちゃんとカッコ良い演奏をしたかった訳じゃないですか。
雑な演奏をするためにステージに上がる人なんか居ないし。
でも、ちゃんとカッコ良い演奏をしたかったはずなのに出来なくて、余計なこと色々言っちゃったりして、いちばん傷付くのは自分なんですよね。

だから、やっぱり甘えると何にもいいことないですね。
甘えを芸の域に、という人にはまだ出会ったことがないなぁ。
もしかしたらそれはグレイトフル・デッドみたいな、お客さんもファミリー!っていう運営の中でなら、あり得るんですかね。

ともあれ、まずは自分の期待に自分が応える。
それが結果的に、お客さんに甘えないことのベースになるんじゃないかと思います。

あと、僕はフジワラノリカよりもホンダツバサの腰骨辺りがいいです。
頭ぶつけて死にたい。

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